また引越しをした。繁華街の中心からほんの少しだけ外れた眠らない街。住めば都なんて言うけれど、一年のうちに2回も遷都したのは初めて。これでみんな幸せだ、なんて自身の決断を正当化しながら、網戸の壊れた窓から見知らぬ喧騒を仁王立ちで眺めるなんちゃって皇帝は玉座に腰を落とす暇も無いまま、めまぐるしい毎日に流されている。
引っ越してまもなく、慣れない道を歩き、乗ったことのない電車に乗った。なんとか辿り着いた東梅田の辺りは行くたびに景色が変わってて、いつも意識を曖昧にしてくる。緑のクマが導いてくれたからいいものの。知ってる?大阪駅前第nビル(n=<4,覚えてない)の中にきらきらの空間があること。時代を巻き戻したようなカフェの中、月より丸い照明がいくつも。コンクリ熱と聳え立つビル群の中を歩いた後だから、余計に暖色のにおいを感じる。
いったいこの街には、まだぼくの知らないきらきらがいくつ隠れているのだろう。隠れるなんて勿体無いのに。いや、隠してるからこそ美しいのか。
また新しいきらきらを教えてくれたあなたが、口元を隠して笑う。いままでは、テキスト越しか、ステージでの歌くらいでしか温度を受け取れなかったから、声がより鮮やかに届く。ひとの痛みを知っている、控えめで優しい声。あたなが生きることに苦を感じるこの世界に、神は居ない。というかあなたの世界にはそもそも神は居なかったね。大乗の端に乗っかてるぼくには、誰かを救うなんて到底できない。ぼくが誰かのためになんて言いながら人を殺したら、あなたはどう思うのかな、なんて。
大阪に来て2年半にもなるのに、帰りの電車は間違えた。めまぐるしすぎて、遠目で見たら普通になっていく。生活が凸凹すぎて、ちょっと俯瞰しただけで瞬く間に海苔波形になる。これで大丈夫。他人からの見た目が平らで、穏やかならひとまず安心する。自分のことなんて誰にもわかってほしくないんだって何度も言い聞かせながら。
口ではそう言いながも、やっぱり神なんて居ない。居ない方が今は都合が良い。ずっとあなたを探してるから。カミサマを訪ね、世界を歩く。ゴールを知ってしまえば、別に手に入れなくてもよくなる。だからどうか現れないで。
いままで集めたきらきらを数えながら願う。7つ集まってしまう前に、ひとつずつ壊れちゃえばいいのに。今を生きる事に必死なフリをしながら、そうやって永遠を探してる。