銀河を超える光に

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距離ゼロの街

都会に住んでいる。

便利で情緒もあり、多様性に富んだ飽きない街だろう。

 

便利過ぎる大きな街が、おれには距離ゼロに感じる。どこへでも簡単に行けるが、どこまでもは行けない。見渡す限り平らな街は隠れる場所も潜る場所も無く、どこまで行けど逃げられない。縦横無尽クモの巣の様に広がる地下鉄、大阪環状線などと訳の分からない名を名乗るウォールマリア、電線の隙間を搔い潜りようやく垣間見える宇宙。

 

人工物は自然と比べ、あんまり風貌が変わる事がない。この街は、人工物の割合と濃度が特に高く、どこに行くにも、ある程度同じ景色を眺めなければならない。最近は最寄り駅までの景色がユーウツで、わざわざ隣の駅や反対方向に買い物に出かける。この時点で既にエンドレスエイトは始まっている。四方八方を駅に囲まれて生活しているが、いずれその全てがデジャブに感じ、ループを脱出できず記憶を保持したまま同じ5億年を過ごす事になるだろう。

 

もちろん、別にこの街が嫌いなワケではない。もし問題があるとするならば情景とのシンクロ率を上手く上げられない自身にあるだろう。

 

ここでの生活は、人間とのコミュニケーションがカギを握っている。何処へでも行ける街では、ヒトとヒトとの物理的距離が近い。積極的にコミュニティを形成することで、自身の生活をより安定させなければならない。そう言い聞かせ続けど、あんまり人間と会わないまま1年が過ぎた。

 

物事ついた頃からある程度幸せな生活を送ってきたはずおれは、ある時期を境に人間の感情に敏感になり、Absolute Terror FIELDを1枚ずつ丁寧に貼り続け、魂からの対話を避けていたように思う。それ故の反動で、気づいた頃には素直に大きな感情を受け取ることができず、自意識の斜め左上あたりで生活をしていた。そうしていくうちに。徐々に徐々に、自身で生み出したコンテンツでしか満足できなくなりつつある。たぶん人間が好きで、人間に一方的に期待し続けた結果、こうやって人間はヒトになっていくのだろう。

 

音楽、というか表現をおれが続ける理由は沢山ある。その一つとして、大きな感情を生み出すため、という要素があると思う。アンテナを広げつつ、大きなことを生み出していく。その過程でどんどん内向的になってしまう気がして安堵と恐怖を同時に感じる。どちらかが行く所まで突き抜けられたとき、長年強度を上げ続けたATフィールドを、窮屈に感じるこの街の外壁ごと破裂させられたら、いいな。

 

そうなったら、つぎの街をキラキラと破壊しに行く。

 

かも。


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