銀河を超える光に

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赤い飴細工

あなたは飴細工のような人だ、と言われたことがある。

 

最近よく思い出す。不器用な低い音といっしょに。見せていないはずの、必死に隠していたはずの表情、その一瞬の綻びを突かれたかのように感じた。そういう、人間の弱さや翳りに気づいてしまう人。人間の壊れる音を知っているであろう人。幸せになってねって、穏やかに健やかに過ごしてねって、何度も何度もあなたが言う。うまく返せない。だってあなたが幸せになるには、この世界はあまりにも硬くてゴツゴツし過ぎている。あなたはそれを知っているはずなのに、どうして他人を想えるのだろう。

 

外的刺激と感情の間に分厚い防御幕のようなものが発生してから何年も経つ。防御幕というか、薄い灰色がかったような半透明のような、分厚い風船のよう。言葉や音楽、受け取った刺激を100%で受け止められていた頃は、よく泣いていた気がする。中学3年くらいの頃、この世界から大きな隕石を投げつけられてからは殆ど泣かなくなった。心は勝手に、自己防衛機構を発動させる。勝手に守るなら、いつ何時も綻びることなく守り続けておくれよ。

 

そのATフィールドは、外部からの光線のみならず、内から湧き上がるエネルギーすらもせき止めている。日々少しづつ内圧が上昇していき、あるとき小さな穴が開く。その際に放出されるエネルギーは体感でだいたい全体の約0.1%程度。さらに穴は殆どの場合は数日で塞がる。このフィールドが完全に破壊されたとき、ヒトは何になるのだろう。どうせ誰しもそのうち暴れ出してしまう。ヒトと呼べるものに留まること叶えば幸運、大抵は"かいじゅう"になり、キミの住む街をキミごと踏みつぶすくらいの偉業は軽くやってのけるだろう。灰になるか本物になるか、命運を分けるのは、エネルギーを放出する際、己を乗りこなすことができるかどうか。

 

産まれたエネルギーをなるべく遠くに飛ばし、この世界の軌道を変える事がぼくの役目。だから赤色なんだよ。いちばん遠くに届く光は、波長の長い赤色。赤色を纏って、なるべくこの強大なエネルギーを乗りこなすんだ。そんでやっぱり、この凸凹の世界を踏みつぶして地球を平らにしてやろう。それが証明になる。フワフワして、平らになった世界。あなたみたいな人でも、必ず幸せになれる世界なんだって。

 

いま身に纏っているこの赤い飴細工
必死に守り続けようか、いっそ叩き割ってしまおうか。

 

答えは出ないまま、今日もたぶん眠れずに昇る太陽に追い越される。それでもエネルギーの総量が太陽を超えるまでは、風船をでっかくし続けるだろう。そしたらいずれ勝手に、赤い飴ごと風船は割れる。

 

そこで気づくんだろうね。

 

にんげんは、何者でもないんだ。

 

ってね。

 

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